海外投資家による日本の不動産への関心が高まる中、シンガポール、香港、台湾などアジア圏の機関投資家やファミリーオフィスを中心に、独自のポジションを築いているのがポスト・リンテル株式会社だ。売買仲介や管理に加え、アセットマネジメント、建設、ビルメンテナンスなどグループの機能を組み合わせ、顧客の課題に対してワンストップで向き合う。そうした取り組みを通じて海外投資家からの信頼を積み重ねてきた。その根底にあるのが、代表取締役社長兼CEO・坂東多美緒氏が繰り返し語る「顧客満足」と「問題解決」。難しい案件だからといって断るのではなく、「どうすればできるのか」を考える。前例や業界の常識にとらわれず、必要であれば新たな取引先を自ら開拓しながら、解決策を探していく。その姿勢は、海外の投資家から「Never Give Up」と評されるほど、ポスト・リンテルの企業文化として根付いている。今回、不動産PRHUBでは坂東氏に、創業の背景から、顧客に支持される理由、独自の組織文化、現在進行するプロジェクト、そしてその先に見据える新たな市場まで話を聞いた。PROFILE|坂東 多美緒 氏ポスト・リンテル株式会社 代表取締役社長兼CEO1978年、東京都生まれ。中学卒業後、単身で渡米。帰国後、さまざまな仕事を経験し2007年、新興の不動産会社だった株式会社デュアルタップに入社。マネージャー、事業部長などを歴任した後、常務取締役に就任。海外不動産事業の拡大などに携わり、2016年の同社東証二部上場にも貢献した。その後、国内外の販売・運用・管理部門を統括。2017年12月にポスト・リンテル株式会社を設立し、代表取締役社長兼CEOに就任。現在は、アジアの機関投資家やファミリーオフィスを中心に、日本の不動産投資に関する総合的なサービスを展開している。アジアの機関投資家に、不動産の「総合サービス」を提供――まず、現在のポスト・リンテルの事業と、その特徴について教えてください。坂東氏:事業の核としているのは、アジアの機関投資家に対する不動産の総合サービスです。中心となるのは仲介と管理ですが、グループにはアセットマネジメント会社、建設会社、ビルメンテナンス会社もあります。また、台湾企業と共同でAIを活用した駐車場関連事業にも取り組んでいます。それらをワンストップで提供できることが特徴です。香港、台湾、シンガポールなどの機関投資家、私募ファンド、ファミリーオフィスを主な顧客としています。一般的には純金融資産1,000億円以上を保有するようなファミリーの資産管理会社もクライアントです。そうした方々が「日本の不動産に投資したい」「不動産を購入したい」「日本に住みたい」と考えた時に、総合的にサポートしています。大手と同じように幅広いサービスを提供しながら、大手ではなかなか難しい細かなところまでフォローする。そこが僕らの一つの強みだと思っています。創業の背景と「もっと顧客に向き合いたい」という思い坂東氏は前職でゼロから海外事業を立ち上げ、経営メンバーとして上場も経験した。一方で、ポスト・リンテルの創業は、当初から綿密に描いていた起業計画から始まったわけではなかったという。――ポスト・リンテルを立ち上げた背景について、改めて教えてください。当時、前職を辞めることを決めた時に、以前一緒に海外事業をやっていたメンバー(現在のポスト・リンテルのボードメンバー)から「一緒に会社をやってほしい」と声をかけられたんです。僕自身は、もともとすぐに会社をやるつもりはなくて、家族で海外に移住することも考えていました。声をかけてくれたメンバーは 当時まだ20代後半でした。すでに独立して事業を始めていて、その会社に僕を代表として迎えたいと言ってくれたんです。自分たちで事業を立ち上げ、僕を代表として迎える。その覚悟に応える以上、僕にも彼らの将来に対する責任があると思いました。「10年後、あなたたちが40代になった時からが本当の勝負だ。それまでに世界で戦えるビジネスマンにすることが自分の役割だ」と伝えて、現在のポスト・リンテルを始めました。一方で、事業としてやりたいことも明確でした。海外投資家とのネットワークが広がっていく中で、一人ひとりのお客様に対して、もっと幅広く、もっときめ細かなサービスを提供したかった。そのためには、自分たちでやった方がいいと思ったんです。顧客満足と利益を両立する。価値の源泉は「問題解決」――坂東さんは、これまでのインタビューでも「顧客満足」の重要性についてお話しされています。この考え方は、現在の経営や事業にどのように反映されていますか坂東氏:まず、株式会社なので、利益を追求することは大前提です。その利益を出す上で何を優先するか。その答えが顧客満足なんです。顧客満足だけでもダメですし、会社の利益だけでもダメ。顧客を満足させながら、きちんと利益を上げる。この2つは必ずセットだと考えています。そして高いフィーをいただくのであれば、それに見合うサービスを提供しなければいけない。お客様が求めているものをどう形にするか。そして、それを超えていく。「我々以上にあなたの求めるものを叶えられる会社はない」と言えるくらいの仕事をする。だからこそ、胸を張ってフィーをいただけるんです。――では、ポスト・リンテルにおける「顧客満足」とは、どのようなものでしょうか。坂東氏:僕らは、「顧客満足度とは問題解決度合い」だと思っています。ビジョンとして「アジアNo.1の不動産ソリューションカンパニー」を掲げています。お客様が抱えている大なり小なりの問題を解決することに、僕らの存在価値があるんです。そして社内でよく使うのが、「常識にとらわれない問題解決思考」という言葉です。一般的な方法で解決できなければ、別の方法を探す。既存のネットワークに答えがなければ、新たなネットワークをつくる。――実際に、その考え方が表れた案件はありますか。坂東氏:ある大型ホテルの売買案件で、決済直前にエレベーターの部品交換が必要になったことがありました。ところが、メーカーにも修理会社にも部品がない。関係者の間にも「このままでは決済できない」という空気が広がっていました。そこで、当社の担当がいろいろなところを探して、最終的にヤフオクで部品を見つけたんです。ヤフオクで探したという結果だけ見れば、誰でもできることだと思うんです。でも、メーカーにもない、修繕会社にもないとなった時に、「じゃあオークションサイトを全部探してみよう」と考えて、実際にやり切る人がどれだけいるか。そこにあるのは、常識にとらわれない問題解決思考と、圧倒的な当事者意識です。ここは他社が簡単には追いつけないところだと思っています。「ポスト・リンテルが一番Never Give Upだから」その姿勢は、顧客にも伝わっている。坂東氏には、海外のファミリーオフィスから言われた忘れられない言葉があるという。――海外の投資家から継続的に選ばれている理由をどのように考えていますか。坂東氏: 以前、香港のファミリーオフィスの方に「なぜポスト・リンテルを使ってくれているんですか」と聞いたことがあります。その時に言われたのが、「ポスト・リンテルが一番Never Give Upだからだよ」という言葉でした。ノウハウとか実績とかスキルではなく、「一番諦めないチームだから」と。世界的な資産家のファミリーがそういうことを言うんだと思いましたし、それはすごく自信にもなりました。簡単なディールはほとんどありません。難しい条件の中で、売主、買主、金融機関、関係会社など、それぞれの立場を尊重しながら、どう案件をクローズさせるか。その時に最後まで諦めないことが大切なんだと思っています。――「Never Give Up」を体現したような案件も多いのでしょうか。坂東氏:そうですね。基本的には「できない」「やったことがない」「他の人がやりたがらない」という案件が多いんです。例えば、ある案件では総額約200億円規模の複数不動産を、実質4日ほどで決済まで進めたこともありました。6人ほどのチームで泊まり込みながら対応しました。もちろん、まとまらない案件もたくさんあります。でも、そこで下を向いていても仕方ない。「どうしたらできるのか」を考え続ける。そういう経験の積み重ねが、僕らの会社の文化にもなっているんだと思います。求める人、そして伸びる人は「素直・ポジティブ・勉強熱心」――難しい案件にも 向き合う組織だからこそ、人材も重要だと思います。ポスト・リンテルで活躍する人には、どのような共通点がありますか。坂東氏:僕がビジネスマンとして大事だと思っているのは、「素直・ポジティブ・勉強熱心」の3つです。難しい案件が多いので、うまくいかないことがあった時にずっと下を向いていたら仕事になりません。次にどうするかを考えられるポジティブさが必要です。そして、当社のお客様は本当に勉強しています。海外経験も豊富ですし、不動産だけでなく、金融や経済、文化、芸術などにも詳しい。だから僕らも、不動産だけを勉強していればいいわけではない。演劇や文化にも触れるし、海外にも行く。いろいろな経験に触れて、感性を磨く。僕は「頭が良くなる」というより、「広い視野を持つ」という方が近いと思っています。最終的にお客様から求められているのは、「どれだけ日本の不動産を知っているか」だけではありません。いかにパートナーになれるか。海外の投資家と長く仕事をしてきて、最後は人間性なんじゃないかと思っています。簡単には真似できない「企業文化」をつくる――「常識にとらわれない問題解決」や「Never Give Up」という姿勢を、個人ではなく組織の力にしていくために、何を大切にされていますか。坂東氏:僕は、企業文化をすごく大切にしています。売上が上がったり下がったり、時代が変わったりすることはあります。でも企業文化は簡単には真似されないし、普遍的な価値になると思っています。売上や利益だったら、無理をすれば1年、2年で作ることもできるかもしれない。でも文化は1年、2年では作れない。5年、10年、20年とかけて積み上げていくものです。だからこそ、間違った文化をつくらず、正しい文化を積み上げていくことを大切にしています。京都、白馬、ニセコへ。海外投資家とともに、日本の不動産の可能性を広げる ――現在進んでいるプロジェクトの中で、注目している案件を教えてください。坂東氏:いくつかありますが、一つは京都の高台寺の参道沿いの築100年ほどの古民家再生プロジェクトです。歴史ある日本家屋と素晴らしい日本庭園が残る物件で、こういう不動産を見ると、日本には世界に誇れる資産がまだまだたくさん眠っていると感じます。一方で、歴史ある建物や庭園を維持し、次の世代につないでいくためには資金も必要です。海外投資家の力も借りながら、日本が持っている価値をきちんと残し、新しい形で活かしていく。単に海外投資家から日本の不動産へ投資してもらうだけではなく、その力を活用することで、日本や日本人がより良い方向に向かう一翼を担いたいと思っています。新しいところでは、白馬で台湾のファミリーオフィスによるホテル開発も進めています。投資家が長期保有することを前提としたプロジェクトで、僕らは土地の仲介やコンサルティングだけでなく、ゼネコン探しまで関わっています。白馬では東京のゼネコンで対応が難しかったので、「雪国での建築経験がある会社を探そう」と考えて、富山や新潟のゼネコンに一社ずつ電話をしました。その中で、新潟のゼネコンさんに「やってみよう」と言っていただいて、今はその会社の力を借りながらプロジェクトを進めています。さらに、この白馬での取り組みを知った香港の投資家から、今度はニセコで取得した約50万坪の土地について相談をいただきました。現在は僕らがアセットマネジメントとして入り、開発企画などを進めています。――既存の提携先だけでは解決できない場合は、新たなパートナーを探すところから動くのでしょうか。坂東氏:そうですね、必要なら新規開拓します。私も電話、メールもしますね。数十億、100億円を超える案件で、お客様が本当にやりたいと思っている。そこで「ゼネコンが見つからないから仕方ないですよね」とはならないんです。お客様からすれば、それは解決しなければならない問題です。僕らもお客様と同じ意識で問題を考える。それが当事者意識だと思っています。アジアで築いたネットワークの先に見据える「中東」ポスト・リンテルが海外投資家と直接向き合うことには、もう一つの強みがある。海外の機関投資家やファミリーオフィスが、「いま日本の不動産をどう見ているのか」「次に何へ投資しようとしているのか」という、生の投資思考に直接触れられることだ。国内外双方の投資家と接点を持つポスト・リンテルにとって、こうした情報は、日本の不動産マーケットの先を考えるうえでも重要な材料になっている。――アジアの投資家とのネットワークを築いてきた中で、 今後5年、10年という時間軸で、ポスト・リンテルはどのような展開を目指していくのでしょうか。坂東氏:今は PM、AM、建設などの機能も揃ってきて、ようやくプラットフォームができてきました。中華圏の投資家向けについては、これからさらに伸ばしていきます。その次は中東だと思っています。中東のお金自体は、すでに日本の不動産に入っています。ただ、香港やシンガポールのファンドなどを経由しているケースが多い。中華圏の投資家のように、直接日本の不動産へ投資するルートはまだ十分に整っていないという話をよく聞きます。そこにはニーズがあると思っています。15年ほど前にシンガポールで日本の新築ワンルームマンションを販売しようとした時も、「大丈夫?」「そんなことやるの?」「華僑はワンルームマンションを買わない」と言われました。それでもやってみたら、2年目には年間約30億円を販売するまでになりました。今では、中華圏の投資家が日本の不動産を買うことは珍しい話という人はいません。中東も同じだと思っています。今はまだ「そんなことできるの?」と言われるかもしれない。でも、10年後には当たり前になっている可能性がある。「答え合わせは10年後」――これまでも周囲から難しいといわれる挑戦されてきましたが、新しい市場に挑戦する時、坂東さん自身が大切にしていることは何でしょうか。坂東氏:周りの評価は、あまり関係ないと思っています。どれだけ経験があるのかではなく、自分の心が動く方向に僕は動いてきました。能力が高いとはまったく思っていません。ただ、誰よりも一生懸命やってきたという自負はあります。今、僕が「中東をやる」と言ったら、無理だと思う人もいるかもしれない。でも、それが正しかったかどうかは今判断することではないんです。「答え合わせは10年後です」編集後記今回のインタビューを通じて印象的だったのは、坂東氏が繰り返し語った「顧客満足=問題解決度合い」という考え方だ。顧客満足を追求する一方で、企業として利益を生み出すことにも真正面から向き合う。そのために、高いフィーに見合う価値を提供し、顧客が抱える課題を解決する。そこには、顧客満足と利益を両立させながら事業を成長させていく考え方が表れている。インタビューで、お話いただいたエピソードに共通しているのは、「できない理由」ではなく「どうすればできるか」を起点に動く姿勢。それは、5年、10年という時間をかけて積み上げてきた組織文化として根づいている。中華圏で築いたネットワークの延長線上に、次は中東という新たな市場を見据えるポスト・リンテル。中東もまた10年後には「当たり前」になっているのかもしれない。不動産PRHUBとしても、ポスト・リンテルが次にどのような市場と挑戦を切り拓いていくのか、引き続き注目していきたい。左 ポスト・リンテル 坂東代表 右 不動産PRHUB 斉藤- COMPANY PROFILE会社名:ポスト・リンテル株式会社代表者:代表取締役社長 坂東 多美緒所在地:東京都港区六本木1-4-5 アークヒルズサウスタワー 11F事業領域:□商業不動産事業・キャピタルマーケット:収益不動産(オフィス、商業施設など)の企画・開発マネジメント海外投資家(中国、台湾、香港、シンガポールなどの機関投資家や超富裕層)向けのクロスボーダー不動産取引・投資コンサルティングファンド企画・アレンジメント、デューデリジェンス業務□住宅用不動産事業・レジデンシャルアドバイザリー:住宅用不動産の購入・売買・資金調達・融資・税務・ローンなどのトータルサポート国内外の個人・法人向け収益住宅コンサルティング□プロパティマネジメント(資産管理)・賃貸管理 □建設事業 公式サイト:https://post-lintel.co.jp/採用情報:https://post-lintel.co.jp/recruit/