INTERVIEW
株式会社シーラホールディングス
シーラホールディングス 杉本宏之会長に聞く、 “岩盤 経営”を土台に仕掛ける2030年への成長戦略

不動産PR HUBコメント
株式会社シーラホールディングスは、総合不動産事業、不動産管理事業、建設、再生可能エネルギー、ホテル、不動産クラウドファンディングなど多様な事業を展開する総合不動産グループへと成長を遂げている。さらに、家賃収入や管理収入などの安定的かつ継続的な「岩盤収益」を積み上げ、持続的な成長基盤の構築を進めている。
こうした成長の先に、杉本宏之会長が見据えているのは、売上規模の拡大だけにとどまらない。より強固な経営基盤の構築だ。インタビューで何度も語られたのは、マーケットが変化しても揺らがない収益基盤をつくること。その上でAIによる生産性向上を進め、利益を社員へ還元し、組織そのものを強くしていくという考え方だった。
今回、不動産PRHUBでは、シーラホールディングス 代表取締役会長の 杉本宏之氏に、現在の事業ポートフォリオからクミカとのPMI、AI活用、人材・組織づくり、再生可能エネルギー、そして2030年に向けた成長戦略まで話を聞いた。
株式会社シーラホールディングス
代表取締役会長 グループ執行役員CEO
2010年にシーラテクノロジーズを創業し、不動産テック・DXを推進。2023年には米国ナスダック市場への上場を実現。2025年には東証スタンダード上場の株式会社クミカとの経営統合を行い、同年6月1日付でシーラホールディングスへ商号を変更。長年にわたり不動産業界で事業経営に携わり、不動産開発・販売を起点に、収益不動産の保有・管理、不動産ソリューション、ホテル、再生可能エネルギーなどへ事業領域を拡大。2026年5月期には売上高393億円を突破するなど、グループのさらなる成長を牽引している。
――まず、現在のシーラホールディングスの事業ポートフォリオについて教えてください。
杉本氏:
もともとはワンルームデベロッパーとして創業しましたが、今ではトップラインで見ても、ワンルームマンションの分譲事業は売上全体の3割程度です。
粗利ベースでみると、マンション分譲、ファンドや事業法人への一棟販売、家賃や管理などの岩盤収益がバランス良くなってきました。
マーケットが多少変調したとしても、特定の事業だけに依存せず対応できる体制になってきていると思います。岩盤収益についても、今期は粗利で22億円を大きく超えてくると見込んでいます。さらに現在は蓄電所やホテル事業も加わってきました。蓄電所では投資利回りが20%を超えるものもあり、ホテルについてもアセットによりますが10%前後のキャップレートが期待できる事業になっています。

――近年の貴社の IRを拝見していると、「仕入れて売る」だけではなく、「保有して収益を生み出す」という方向性を強く感じます。
杉本氏:
それはかなり前から意識してきました。
2013年のアベノミクス以降、大規模な金融緩和が進んでいく中で、「これからは持つものが強くなる」と考え、アセットを保有する方針へ切り替えてきました。
現在、固定資産だけでも約400億円あります。
バランスシートも約700億円規模まで大きくなり、その中には家賃など継続的な収入を生み出す資産がかなり積み上がっています。
私たちは投資用不動産を扱っているので、在庫も収益を生み出します。
これは我々の大きな強みだと思っています。特に東京を中心にアセットを集中させてきました。
人口動態や供給状況、再開発などを見ても、すべてのエリアが同じように伸びるわけではありません。だからこそ「どこに資産を持つのか」は非常に重要です。
――不動産価格や金利環境にも変化が見え始めています。その中で、今後の経営をどう考えていますか。
杉本氏:
売買価格については、我々は調整局面に入ってきていると認識しています。
これから金利が上がっていけば、金融機関も「貸す会社」と「貸さない会社」をより明確に選別するようになるでしょう。
一方で、賃貸マーケットは非常に強い。だからこそ、今はトップラインを無理に増やす必要はないと思っています。
前期が393億円で、今期についても400億円前後を想定していますが、営業利益は30%以上伸ばしていく計画です。売上だけを追うのではなく、「中身」を良くする。
そして岩盤収益を積み上げていく。今はそういう局面だと考えています。
シーラホールディングスの特徴のひとつが、利益成長とコストコントロールを両立している点だ。その背景には、全社的に進めるAI活用がある。
――販管費を抑えながら利益を伸ばしています。AI活用もかなり進めているそうですね。
杉本氏:
AIは積極的に使っています。
エンジニアチームを中心に、自分たちで業務アプリを開発する取り組みも進めています。
例えば、土地を仕入れる際のボリュームチェック。以前は長いと1週間程度かかっていましたが、現在は最短1時間ほどで確認できるケースもあります。
建物のパースもそうです。以前は外注すると数日かかり、数十万円のコストが発生していたものが、生成AIを活用することで数十分でイメージを出せるようになりました。
営業活動についても顧客管理システムなどのデータと組み合わせながら、しばらくコンタクトできていない顧客や、営業担当者の活動量を分析しています。
これまで人の経験や勘に頼っていたところにAIを入れると、今まで見えなかったものが可視化される。不動産のようなレガシーな業界だからこそ、AIによる改善余地は大きいと思っています。

杉本氏は以前から「少数精鋭」の組織づくりを経営のテーマとして掲げてきた。 AIの登場によって、その考え方が現実的な経営モデルになりつつあるという。
杉本氏:
以前から掲げていた「少数精鋭にしたい」という考え方は、ある意味で理想論でもありました。
でも今はAIがあります。人を大量に増やさなくても、生産性を上げられる環境が整ってきた。前期の販管費が45億7,000万円程度で、賃上げをしながらも、ほぼ同じ水準でコントロールできています。
人を増やして売上を伸ばすというより、一人ひとりの生産性を高めていく。その分、利益が出れば社員へしっかり還元する。そういう会社にしたいと思っています。
2025年、シーラホールディングスはクミカとの経営統合を実施。グループの事業規模、バランスシートともに拡大し、同社にとって大きな転換点となった。統合後のPMIを杉本氏自身が深くリードしてきたことも、今回のインタビューで印象的だった。
――今回、経営統合後初となる通期決算を迎えました。クミカとの経営統合は非常にスピーディーに進んだ印象があります。統合に至るまで、どのような動きをされたのでしょうか。
杉本氏:
実は昔、クミカさんから物件を購入したことがあるんです。
当時、先方のアセットを我々が引き取ったことがあって、そのことを覚えていてくれた。そうした過去の関係もあり、今回の話につながっていきました。
デューデリジェンスについても外部任せにはせず、私自身や開発責任者などで直接物件を見て回りました。
「不動産の価値は、不動産屋が一番分かるはずだ」と。
自分たちでアセットを確認し、十分な価値があると判断しました。
また、当時は他社も含めてM&Aの話が進んでいた中で、旧オーナーに対しては、これまでの事業や社員を尊重し、統合後も「人を大切にしていく」という我々の考え方をしっかりとお伝えしました。
過去の仕事を通じて築いてきた信頼関係に加え、そうした経営に対する考え方も理解していただけたことが、今回のご縁につながったのだと思います。
その上で、我々自身がアセットの価値を見極め、意思決定を迅速に行ったことで、スピード感を持って経営統合を進めることができました。
――経営統合後に社員の皆さんとは、どのように向き合ってきたのでしょうか。
杉本氏:
PMIでは、最初がものすごく重要だと思っています。
考え方が違う人たちと、そのまま一緒に仕事をすることはできません。
だから、我々がどこを目指しているのか。どういう会社にしたいのか。どういう人と一緒に働きたいのか。私自身が何度も足を運び、社員一人ひとりと話しました。
結果的に退職された方もいますが、残ってくれた人たちは今、シーラのビジョンを理解して、それぞれの部門で活躍してくれています。
実際、昨年の仕入れ部門のMVPもクミカ出身の社員でした。
これは非常にうれしかったですね。

シーラホールディングスのエントランスには、同社が大切にするメッセージが随所に。「WE ARE ALL IN THE SAME BOAT(私たちは同じ船に乗っている)」もそのひとつ
――採用や人材登用では、どんな人を評価していますか。
杉本氏:
会社が好きで、「この会社のために頑張りたい」と思ってくれる人ですね。
そして、できない理由を考えるのではなく、「どうやったらできるのか」を最初に考えられる人。
そういう人を大切にしています。
最近は特に「生え抜き」を大事にしたいと思っています。
当社の新卒として入社して6〜7年経てば、いろいろな経験を積んでいます。
未公開企業としての初の資金調達、コロナ禍、ナスダック上場、そしてクミカとの経営統合など、この間に売上は4倍になり、総資産も社員数も4倍になりました。この成長を見てきた生え抜き社員たちには日頃から「もっと自信を持っていい」と伝えています。
そういう若い人材を部長などへ積極的に抜擢して、ベンチャーマインドを持った組織をつくっていきたい。
能力が多少高くても、組織がバラバラでは強い会社にはならない。
一体感のある組織の方が、結果として大きな力を発揮すると考えています。

AIを積極的に導入する一方で、シーラホールディングスはリアルなコミュニケーションや現場を非常に重視する会社でもある。
月曜日には社員が集まり、ビジョンや価値観を共有する。
社員自らオフィスや周辺を清掃し、経営陣も物件の現場へ足を運ぶ。杉本氏自身、それを「昭和な会社」と表現する。
杉本氏:
強烈なカルチャーがある会社は強いと思っています。
特にここ3年くらい、それを確信するようになりました。
オンラインだけですべてを完結させるのではなく、実際に集まって顔を合わせることも大切です。
現場も同じです。
全ての物件の竣工検査には私自身も行きますし、30分でもいいから工事現場へ足を運ぶようにしています。
経営者が現場を知らなくなったら駄目だと思っています。
杉本氏が繰り返し口にしたのが、「利益を社員へ還元する」という考え方だ。
賃上げや賞与だけではない。確定拠出年金、持株会、定年後の働き方など、長期的に社員が安心して働ける制度づくりを進めている。
杉本氏:
会社が成長して利益が出たのであれば、それを社員へ返していかなければいけないと思っています。
賃上げもしていますし、賞与も増やしています。確定拠出年金や持株会の支援も拡充しています。
定年についても、長く働ける選択肢を増やしました。
それと、私が大事にしている言葉に「一隅を照らす」があります。
営業のように数字が見えやすい仕事だけではなく、賃貸管理や建物管理、設計、経理、総務など、会社を支えてくれている人たちがいる。
表面上目立たない部門の人たちが会社に光を与えてくれていますし、そういう人たちの将来のキャリアが明確に見える会社にしたい。
それがエンゲージメントにつながり、最終的には会社の成長にもつながると思っています。
積極的に事業を拡大する一方で、杉本氏の経営思想の根底にあるのは、常に「最悪のケース」を想定する姿勢だ。
――成長投資を続けながら、財務の安全性についてはどのように考えていますか。
杉本氏:
岩盤収益を積み上げてきたことで、仮に新規の売上が大きく落ち込んだとしても、一定期間耐えられる会社になってきています。
社員にも「簡単には潰れない会社になっている」ということはきちんと説明しています。
安心して働いてもらいたいですからね。
ただ、だからといって経費を緩めることはありません。
毎月「デトックス会議」をやって、顧問先や業務委託先も含め、細かいコストまで無駄がないかを確認しています。
AIについても、導入しただけで終わらず、「本当に使われているのか」「生産性が上がっているのか」を毎月検証しています。
守りを固めるからこそ、攻めることができると思っています。
――不動産に加えて、太陽光や蓄電所など再生可能エネルギー事業を展開しています。なぜこの分野だったのでしょうか。
杉本氏:
これは、どちらかというと私自身の理念から先行して始めた事業です。
AIが普及すれば、データセンターなどを含めて電力需要はさらに増えていく。
日本にとってエネルギーの確保は大きなテーマです。そう考えると、再生可能エネルギーは必要になっていく。そこに事業として取り組みたいという思いがありました。
もちろん、始めてみたら簡単ではありませんでした。
M&Aを通じて太陽光発電に参入しましたが、事業として安定するまでには時間がかかりました。ただ、5年かかってようやく岩盤収益のひとつとして形になり始めています。
蓄電所についても非常に高い投資効率が見込める案件が出てきています。

――最後に、2030年頃のシーラグループをどのように描いていますか。
杉本氏:
オーガニックな成長だけで考えても、700億円前後までは見えてきています。
そこにM&Aを組み合わせて、1,000億円規模を目指していくイメージです。
M&Aについては、4年に1社ぐらい。オリンピックと同じくらいの頻度ですね(笑)。
当社の不動産事業とのシナジーや、成長性をしっかり見極めながら、グループとして新たな価値を生み出せる会社を選んでいきます。
一方で、不動産事業そのものについても、投資するエリアは明確に選別しています。
古いビルを買って耐震補強し、フルリノベーションしたり、用途をコンバージョンしたりする。時間がかかる案件は、短期的な利益を求める会社にはなかなかできません。
でも我々は、時間をかけて価値をつくることができる。今仕込んでいるものが完成するのは2年後、3年後です。
デベロッパーは常に少し先の未来を見ながら仕事をする会社です。
そこにM&Aを加えながら、非連続な成長をつくっていきたいと思っています。
編集後記
今回のインタビューを通じて感じたのは、シーラホールディングスの成長を支えているのが、市況のトレンドや個別プロジェクトの成功だけではないということだ。
都心部を中心に収益不動産を保有し、「岩盤収益」を積み上げる。一方で、AIを積極的に活用し、少数精鋭で生産性を高める。そして生まれた利益を社員へ還元し、組織としての一体感をさらに強くしていく。「強い財務」と「強い組織」。杉本氏が進めているのは、この二つを同時につくり上げ、その強固な土台の上で新たな挑戦を続ける経営とも言える。
現場や人を大切にする一方で、AIなどの新しいテクノロジーを積極的に取り入れる。岩盤収益を積み上げながら、再生可能エネルギーやホテル、M&Aといった次なる成長機会にも投資する。
そこには、シーラホールディングスが持つ「堅実さ」と「ベンチャーマインド」の両面が表れている。
既存事業による着実な成長に加え、M&Aによる非連続な成長も見据えるシーラホールディングス。“岩盤経営”という土台の上で、これからどのようなアセットを積み上げ、どのような企業を仲間に加え、2030年に向けてどのような成長を描いていくのか。今後の展開に注目していきたい。

左 シーラホールディングス 杉本氏 右 不動産PRHUB 斉藤
- COMPANY PROFILE
会社名:株式会社シーラホールディングス
代表者:代表取締役会長 グループ執行役員CEO 杉本 宏之
所在地:東京都渋谷区広尾1-1-39 恵比寿プライムスクエア 7F
事業領域:総合不動産事業/不動産管理事業/建設事業/再生可能エネルギー事業/その他事業
上場証券取引所:東京証券取引所 スタンダード市場(証券コード8887)
公式サイト:https://syla-holdings.jp/
IR・投資家情報:https://syla-holdings.jp/ir/investor_relations/
公式note:https://note.com/sylaholdings
採用情報:https://syla-recruit.jp/
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