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AIを使わない現場を、どう動かしたか - シーラホールディングスの実践に見る「全社AI活用」の現在地

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AIを使わない現場を、どう動かしたか - シーラホールディングスの実践に見る「全社AI活用」の現在地

株式会社シーラホールディングス

2026/10/10 01:54

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AIを使わない現場を、どう動かしたか - シーラホールディングスの実践に見る「全社AI活用」の現在地

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AIを使わない現場を、どう動かしたか - シーラホールディングスの実践に見る「全社AI活用」の現在地

株式会社シーラホールディングス

2026/10/10 01:54

AIを使わない現場を、どう動かしたか - シーラホールディングスの実践に見る「全社AI活用」の現在地

不動産PR HUBコメント

2026年9月17日、グリーエックス、Polyscape、シーラホールディングスの3社によるイベント「AIを使わない現場を、どう動かしたか」が、グリーエックス本社で開催された。

AI活用を組織に浸透させる方法や、ガバナンス、セキュリティ、ROI、人材育成まで、実践者ならではの議論が交わされた。
不動産PRHUBは、総合不動産グループであるシーラホールディングスの取り組みに注目した。前半ではセッションの要点をレポートし、後半では登壇後に行った大川琢上席執行役員CTOへの独占インタビューを届ける。

同社の杉本会長は先のインタビューで、AIを使った建築ボリュームチェックに触れ、「一人ひとりの生産性を高めていく」と語った。本稿では、その方針を現場でどう進めているのかを大川氏の発表と取材から追う。
関連記事:杉本宏之会長インタビュー

AIを使わない現場を、どう動かしたか

本イベントでは、AIトランスフォーム支援を手がけるPolyscape、DXコンサルティングを展開するグリーエックス、そしてAIを実際の不動産事業に組み込むシーラホールディングスが登壇した。

立場は異なるものの、共通していたのは、ツールを配布するだけではAI活用は定着しないという問題意識。セッションでは、現場の担当者をどう動機づけるか、業務をどう切り出すか、活用とセキュリティをどう両立するか、成果やトークンコストをどう捉えるかといった論点が取り上げられた。

3社によるパネルディスカッション
中央がシーラホールディングスの大川琢上席執行役員CTO左がグリーエックス株式会社吉本 圭氏、右が株式会社Polyscape島田 寛基氏

シーラグループの全部署を回るオンボーディング。トップダウンと現場起点でAI活用を広げる

シーラホールディングスの発表は、仕入れ、企画、設計、建築、販売、賃貸管理など、多様な実務を担う総合不動産会社が、AIをどのように現場へ浸透させているのかを具体的に示すものだった。

同社には、現在20を超える部署があり、担当する業務もデジタルへの習熟度もそれぞれ異なる。経営の意思決定を起点にAI導入を進める一方で、ガバナンスとセキュリティの枠組みを整え、各部署へのオンボーディングを重ねてきた。


大川氏:

まずは 全部署を一つずつ回りながら、ひたすらオンボーディングしていきました。
まず『AIではこういうことができます』と伝えたうえで、現場とディスカッションすると、建築ならボリュームチェック、経理なら請求書処理というように、具体的な活用テーマがどんどん出てきます

単にツールの使い方を説明するのではなく、それぞれの部署が抱える業務や課題を確認し、AIで解決できるテーマへ落とし込んでいく。こうした対話を通じて、現場から具体的なユースケースを掘り起こしてきました。

思考したうえで どれが正解か分からないときは、
とりあえずできることを全部やってみる。

AIによって、作る側のコストも、考える側のコストも大きく下がりました。そのアドバンテージを生かして、いろいろな方向から取り組んでいく。うまくいかなかった施策が一つ、二つあってもいいと思っています。

最初から一つの正解を決めず、小さな試行を重ねながら各部署に合った活用方法を探す。全部署を回るオンボーディングは、現場ごとの課題をAIの活用事例に変えていくプロセスでもあった。

不動産の専門知識が、AIで事業に活かせるアプリに

セッションで紹介された事例の一つが、土地の仕入れ時に行う建築ボリュームチェックだ。

デベロッパーは土地を仕入れる際、建ぺい率や容積率、自治体ごとのワンルーム規制などを踏まえ、どの程度の建物を建てられるのか、どのような住戸構成にすれば収益性を高められるのかを検討する。シーラホールディングスでは、こうした法規条件の整理から複数案の比較、採光・日影・斜線、工事費などの検証までを、AIを使って短時間で行う取り組みが進んでいる。現場の担当者や設計担当者がプロンプトを工夫し、具体的なプランを組み立てるところまで形にした。

大川氏:

建築ボリュームチェックアプリが形になったときは、僕も結構驚きました。ドメイン知識を持つ人が取り組むと、こういうものがすぐにできるんだなと。これまでSaaSとして提供されてきたような機能まで、現場の担当者が自分たちで形にできるようになっています。


もう一つ紹介されたのが、建築現場で配筋検査を支援するアプリ。コンクリートを打設する前に確認すべき箇所を図面から整理し、現場で検査結果を記録できる仕組みを、業務を熟知する担当者自身が大川氏の支援を受けながら作り上げた。

大川氏:
配筋検査を支援するアプリも現場の担当者が考え、僕がバイブコーディングを教えながら作っています。紙で進めていた業務をアプリで完結させ、デジタル化できる。そうした事例が現場から出てきています。

業務を知っているドメインエキスパートが作ると、本当に実用的なアプリができます。僕は、むしろビジネスサイドの人がClaude Codeのような実行型AIを使うところに、大きなインパクトが生まれると思っています。

現場の制約や判断基準を知る担当者が、AIによって「作れる側」へ回る。そのうえで、必要に応じてエンジニアが再設計し、より強固な仕組みにしていく。AIは、現場の専門知識を具体的なアプリケーションへ変換する役割を担い始めている。

建築ボリュームチェックの事例。法規条件の整理から複数案の比較、検証までを行う

現場担当者が作成した配筋検査アプリ。図面上に検査箇所を記録し、検査日や部位まで一体で管理する

活用が進んだからこそ見えてきた3つの壁

一方、AIの利用が社内に広がったことで、次の課題も見えてきた。「活用スキルと知識共有」「コスト管理」「業務の再設計」という3つの壁。

大川氏:
活用できる人のスキルには、まだ壁があります。さらに、それが個人の知識にとどまってしまい、ナレッジとして共有するのが難しいという課題もあります

最近は、活用が進めば進むほど、トークンの上限やマネジメントが難しくなることが顕著になってきました。このまま進むと、来期はLLMのコストが2倍になるのではないかという悩みもあります。

今の仕事の進め方をそのままAIで効率化するのではなく、AIを前提にした仕事の進め方を考えていきたい。『AIを使ったら、業務そのものをこう変えられるのではないか』というディスカッションをしていく必要がありますね。

これらの課題に対し、同社は「バイブコーダーの育成」「社内AIによる知識共有」「AIを前提とした業務の再設計」という3つの打ち手を進めている。

社員をAIの利用者にとどめず、自ら仕組みを作る側へ育てる。一人が見つけたプロンプトや工夫を全員が再利用できる環境を整える。そして、既存業務の部分的な効率化から、仕事の流れそのものを変える段階へ進もうとしている。

人を動かす鍵は「最初の成功体験」

大川氏:
AIでこういうことができるのか、という成功体験を一人ひとりに感じてもらい、それをどれだけ増やせるかが重要だと思っています

非エンジニアの社員が、自分の業務を一度でも自動化できれば、AIは抽象的な技術ではなく、自分の仕事を変える具体的な道具になる。その小さな成功体験が、新たな活用のアイデアや次の挑戦につながっていくと考えています。

ただし、AIで何ができるのかを現場の担当者だけで思いつくことは難しいです。例えば、ボリュームチェックにAIを使えるとは、最初からなかなか思いつきません。

経理の人も、自分が今やっている仕事をAIで変えられるとは考えにくい。
だから、技術が分かる人が少し踏み込んで『こういうことができます』と伝える必要があります。
一方で、エンジニア側にも業務への解像度が求められます。


各部署を回りながら、あまり使わなそうな人にもタイミングを見て声をかけ、心理的なハードルを下げていく。技術のマネジメントというより、コミュニケーションや組織のマネジメントに近い仕事の比重が増えています。


全員を一律に動かすのではなく、各部署の業務や人材を理解し、挑戦する人を見つけて支援する。AI導入が進むほど、CTOに求められる役割も、システムの整備だけではなく、コミュニケーションや組織マネジメントへと広がる。

AIがどれほど進化しても、人や組織が自動的に変わるわけではない。社員がAIの可能性に気づき、自分の業務で成果を実感できる機会を増やす。その積み重ねが、中長期的な組織変革につながっていく。


独占インタビュー|なぜシーラは短期間でAI活用を進められたのか


PROFILE|大川 琢 氏
株式会社シーラホールディングス
上席執行役員CTO

2005年、NRIネットコム株式会社に入社。2011年、株式会社エニグモに入社し、EC・インターネットサービスの開発に携わる。2021年、株式会社シーラテクノロジーズ グループ執行役員CTOに就任。2025年に株式会社シーラホールディングス グループ執行役員CTO、同年に執行役員CTOを経て、2026年より上席執行役員CTO(現任)。同年、株式会社シーラの取締役に就任(現任)。グループ全体のプロダクト開発とテクノロジー戦略を統括する。


――短期間で全社的なAI導入を進められた背景には、何があったのでしょうか。

大川氏:
まず、当社には不動産クラウドファンディング「利回りくん」をはじめ、さまざまな不動産関連事業や新規事業に挑戦する土壌があります。日常的に新しい技術に触れ、取り入れてきたことが一つの背景だと思います。

施策としては、オンボーディングが大きかったですね。私自身、もともと不動産を保有していることもあり、物件の収益性や金融機関ごとの評価、レントロール、売買・仲介のプロセスなど、業務について一定の理解がありました。現場の人と目線を合わせ、業務の話をしながら技術の知識を伝えられたことが大きかったと思います。

――トップダウンだけでなく、現場からも活用事例が生まれているとの話でしたが、これはシーラの組織文化も影響していますか。

大川氏:
新しいことに挑戦する文化や、採用時にカルチャーフィットを重視していることは影響していると思います。社内には、設計の専門家やSQLを扱える人、ExcelやGASを使って業務を工夫してきた人など、さまざまなスキルを持つ人がいます。

そうした人たちが 以前から持っていた知識やアイデアを、AIによって形にしやすくなり、ほかの人にも共有できるようになりました。それも、短期間で活用が広がった理由の一つだと思います。

――不動産会社がAI活用に取り組む意義を、どのように捉えていますか。 

大川氏:
前提として、AIが自社の収益にどう寄与するかという視点で考えています。コスト削減や生産性向上も大切ですが、ツールを導入し、使うこと自体が目的ではありません。事業にどう生かすかを考えて取り組むことで、大きな成果につながると思います。

これまでは、アイデアを形にするために複数のエンジニアが必要でした。今はアイデアとやる気があれば、実現までの間をAIが埋めてくれます。

――今後、AI活用をどこまで進めていきたいと考えていますか。

大川氏:
AIを活用できる人材を育て、活用を支える仕組みも社内に増やしていきたいと考えています。そのためには、教育が重要です。
以前はITや英語が必須スキルと言われましたが、これからはAIとともに働く力が、それらと同じように求められると思います。

業務知識を会社のアセットとして整理し、それをAIに乗せる。その先では、AIを使ってどう事業をつくるか、人をどう成長させるかが重要になります。
人が成長すれば、そこからまた新しい施策が生まれていきます。

左 不動産PRHUB 斉藤 右 シーラホールディングス 大川氏

AI導入の先にある、不動産会社としての競争力

今回のセッションと独占インタビューから見えてきたのは、シーラホールディングスのAI活用が、単なる業務効率化にとどまっていないことだ。

現場に蓄積された不動産の専門知識を起点に、担当者自身が業務を再設計し、成果につながる仕組みをつくる。その積み重ねが、仕入れの精度、建築現場の品質、生産性、そして人材の成長へとつながっていく。

テクノロジーが急速に変化するほど、企業に残る本質的な資産は、現場が持つ業務知識と、それを活用して新しい価値を生み出せる人材になる。
AIを導入したかではなく、AIによって現場と事業をどこまで変えられたか。シーラホールディングスの実践は、不動産業界におけるAI活用を示してくれている。


■イベント概要 ※本イベントは終了しています

イベント名:AIを使わない現場を、どう動かしたか AI全社導入を阻む壁の壊し方
開催日:2026年9月17日(木)
会場:グリーエックス株式会社 本社
登壇:大川 琢氏(株式会社シーラホールディングス)、吉本 圭氏(グリーエックス株式会社)、島田 寛基氏(株式会社Polyscape)
主催:グリーエックス株式会社/株式会社Polyscape/株式会社シーラホールディングス
イベントURL https://peatix.com/event/5144780